紅をひく女・・・ほろ酔いで頬を赤める女・・・湯上りに髪をとかす女・・・どれも男の心をくすぐるが、大海に出でた我々にはイワシ様の赤い誘惑に勝るものはない・・・そう久方ぶりにイワシ様に誘われたのだ・・・前日までの低調ぶりが嘘のようなアタリにバラシも嵩む・・・にも関わらず有り余る海神からの持て成しに、「雨さえなければ今日は最高だった・・・」と御客様・・・その雨は嬉し涙だった・・・

卯月がのっけから定休日で出鼻を挫かれた感がありましたが、釣果もパッとせず足踏み状態・・・こんなんじゃあ御客様の気を引く事は出来やしませんなあ・・・いつだって好釣果なんぞは幻想に過ぎませんから・・・地道に己の信じた道を行くだけと・・・

卯月のっけからの定休日でズッコケそして本日出船・・・イワシ様雲隠れ・潮流申し訳程度という、行く末を案じるどころか末路が垣間見れてしまいそうな状況・・・それでも夜空を見上げ胸元で両手を握り合わせ、「いつかきっと・・・」と夢見る少女のように・・・「さあ皆あの夕日に向かって走るぞ！」と息巻く青春バカ物語のように・・・私は大海原に挑み続けなければならないのだ・・・時には娼婦のように・・・時には母のない子のように・・・時の過行くままに・・・

弥生の最終日にして最大の５．１５ｋｇが登場したが、アタリの数は雀の涙・・・このまま闇に支配されてしまうのか？否か？続報を待って頂きたい・・・

皆の者伏せい～大名行列ならぬイワシ様の行列に、ヒラメも沈黙を破り覚醒か？ヒラメの目覚めの良さは宜しいが、御客様は冬眠から目覚めてくれず、閑古鳥を従えての出船に一抹の寂しさを覚える・・・こんな時に両舷に御客様がいたなら・・・仕方あるまい・・・厳しい現実から目を背ける訳には行かぬ・・・それがオイラの力量なのさ・・・ただただ真摯に取り組む事だけが、商いの最善策ではない事は承知のうえ・・・だがオイラは馬鹿真面目・・・気の利いた事も言えなけりゃ要領も悪い・・・あんたこの商いには向いてないよ・・・神様ならそう言うだろう・・・だがね、そんなあたしの船宿を選んで下さる御客様が一人でもいる限りは、ひたすら一所懸命にやる事・・・それがあたしの生きる道・・・

３日かけての乗船人数がギリギリのつぬけ・・・あたしゃあふぬけ・・・見えない敵の見えない銃弾を掻い潜りながらの、ほふく前進状態・・・我が敵は我にあり・・・命削り取られぬよう心折れずに進みたし・・・

連日のアヒル釣果が災いしたのか？客なし２連休明けでの出船・・・家に居た所で役に立たない呑兵衛亭主・・・やはり大海に出でて何ぼ・・・悶々と過ごした２日間が一気に払拭されるよう・・・良い香りをさせた綺麗なおねーちゃんに御酌されるのも宜しいが、心の洗濯は大海原に揺られ潮の香りに包まれるのに限る・・・さあしかし何と言ってもヒラメの御機嫌如何にだが・・・

地べたに頭を押し付けられ泥水を飲まされているよう・・・ぐぐぐ・・・

闇夜に光る刃・・・かたっぱしから叩き切ったる座頭市・・・だが今のオイラは盲目の座頭市操業・・・すり足・手探り・股まさぐりで、いやーんばかーんお父ちゃん止めてあげて！・・・春を迎えようと言うのに大海は冬再びである・・・

急転直下・・・たった２日の蜜月関係に終止符が打たれる事に・・・ああ無情・・・橋幸夫は「霧氷」・・・

開始間もないヒラメ初見であったがその後は足踏み状態・・・ならばと前日のイワシ様発情地帯へと・・・当然ながらイワシ様の御姿は皆無・・・それでも・・・だからと言って・・・やるしかないでしょと・・・始まりこそ型程度であったが、その後は一流し９枚肖る時もあり辛くもオデコなく納竿に・・・

沈黙を破り海神開眼か・・・